MUREADER’s blog

DAW、プラグイン、音楽機材などDTMの話が多めです。

喪失と追悼:Prince『HITnRUN phase two』

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Prince突然の死

日本時間4/22午前3時頃、Princeの突然の死が世界中を駆け巡りました。

朝起きて知った、という方も多いとおもいます。

 

僕はというとちょうど寝ようという頃で、突然の訃報に目を疑い、ショックで眠気もどこかへ行ってしまい茫然としました。絶句、というのが正しいかもしれません。

その死を受け止められず、プリンスを聴くという気持ちにもなれずただ漂っている、そんな時間でした。

 

世界中のミュージシャンをはじめ、著名な方たちやファンが追悼のメッセージを寄せ、その数はおびただしいものでした。SNSのタイムラインはプリンス一色。

 

先日プリンスが救急搬送されたというニュースを目にして、その時「やばいんじゃないか」と一瞬不安がよぎりましたが、インフルエンザということだったのでまあ大丈夫だろうなと胸をほっとなでおろし日々を過ごしていました。

だから逆にというのもあるし、57歳という若さもあって、驚きは大きかったです。

こんなにもショックなのかと自分で自分にびっくりもしました。

Prince信者かというとそういうわけではない、というのは自覚しているところでもあったので。

ただ、音楽にふれて生きてきた中で、節目節目というか、人との結びつきを考える時にプリンスがそこにいた、ということは何度もありました。

 

一夜明けて、一日を無為に過ごし、今ようやく何か聴こうと思い取り出したのはPrinceの最新作であり遺作となってしまった『HITnRUN phase two』でした。

これは以前にもこのブログで取り上げたことがあります。

 

Princeの作品について 

Princeのファンはここ日本でもたくさんいて、思い入れのある曲、アルバムというのがそれぞれにあることと思います。

デビュー作の『For You』、自身の名前を冠した2作目『Prince』、その存在を世界中に知らしめ大ヒットとなった『1999』やアカデミー賞を受賞した自伝映画のサントラ『Purple Rain』、衝撃的なジャケット、アルバム構成(トラック分けされておらず通しで聴くしかない)の『Lovesexy』や2000年代に入っていいわゆるジャズファンやファンクファンにも衝撃を与えた『The Rainbow Children』や『Musicology』など把握できるオリジナル・アルバムだけでも51枚もの作品をリリースしています。

 

僕自身Princeをリアルタイムに聴き始めたのは、ジャズを始めた時期と重なった『The Rainbow Children』あたりからです。他の人と比べると相当に遅い、です。

その頃からでも20作近くリリースしているんですから、その創作意欲というのはものすごいなとあらためて感じます。

 

昔からのファンからすると、近年のPrinceは以前と比べてあまり評価できないというところももしかしたらあるかもしれませんし、特に異論を挟むこともないです。僕自身、遅いので。もちろん昔から今に至るまですべてのPrinceが好きな方もいらっしゃると思います。

僕が思ったのは、やはり限りなく今に近いPrinceを今聴きたい、ということでした。

 

『HITnRUN phase two』

そしてこの『HITnRUN phase two』。

これは2015年アメリカのメリーランド州ボルティモアでの痛ましい事件に端を発した「BALTIMORE」から始まります。

いまだ存在する黒人への人種差別。この事件は大規模なデモへと発展し、日本でも大きなニュースとなりました。

 

戦争がないということ、それは平和ってことじゃない。

僕らはもう泣き疲れた、人が死んでいくのは耐えられない。

銃を捨てよう。

今こそ、愛そう。聴こう、ギターを。

正義がないのなら、平和なんてない。

 

プリンスの痛切な叫び、訴えが心に深く刺さります。

そして音楽家としてのすごさを感じるのは、その日々の情景や沈痛な空気、悲壮感やどこかに漂う「まだこんなことを繰り返していくのか」という諦めにも似た感情が、コードワークやアレンジに見事に落とし込まれていて、それが言葉と一体になって迫ってきます。

こういった表現ができるミュージシャンというのは、本当に少ない。

 

 

そしてここからプリンスは黒人としての生、言葉、音楽、そして愛をこのアルバムで描いていきます。

2曲目「ROCKNROLL LOVEAFFAIR」でそこまでの沈痛な空気ががらっと変わり、音楽に身を委ねよう、そんな空気が現れます。

とにかく2と4をとにかく入れ込むというビジュアルもさることながら、歌詞の韻の踏み方も小気味好くユニークな「2.Y.2.D」。

思わず聴き惚れてしまうムード満載なイントロから始まるR&B、Soulな「LOOK AT ME,LOOK AT U」。YouをUに、toを2、forを4というのはもちろん、WhyをYに、IをEyeにととにかく置き換えまくるのが歌詞を読む時のビジュアルとしてもおもしろい。アメリカって今みんなそうなんですかね?海外のアーティストの場合ライナーに歌詞を入れない人も多いですが、プリンスがそれだけ歌詞の表現を大事にしているのか、というのがよくわかります。

「STARE」でもプリンスは数字を使ってたくさん遊びます。ファンクの1.2.3をSTAREに見立てるように。秀逸。

「XTRALOVEABLE」。これはもうタイトルでやられちゃいますね。エクストラですよ、エクストラ。EYE'D REALLY LOVE 2 C U DANCE。ダンサブルでハッピーな1曲。

体の芯まで音楽を楽しむ。

 

そして「GROOVY POTENTIAL」。このアルバムで「BALTIMORE」の他に1曲なにか選ぶとするなら(色々迷っちゃいますが)この曲です。

WE GOT THE GROOVY POTENTIAL、グルーヴの可能性ってもんを見せてやるよと言わんばかりに、変幻自在にうねり、とてつもないグルーヴに到達する。

黒人音楽に魅せられたミュージシャンには常にグルーヴというのが付き纏うけれど、こういうもんです、はいどうぞ!とベストな料理が出てきたという感じです。

ぐうの音も出ない。文句なしに狂えます。

 

Soul Loveな「WHEN SHE COMES」、底知れない歪のエネルギー「SCREWDRIVER」、音楽の神様とユニークに会話する、ミュージシャンに勇気をくれるような「BLACK MUSE」、そして個人的にはプリンスの宗教色を感じる「REVELATION」、最後は「あなたの腕の中はビッグ・シティ」となんだか最高な気分にさせられてしまう「BIG CITY」で終わります。

 

かつてのPrinceが世の中に与えたエポックメイキングなサウンド、というのは正直ありません。

ですが、社会や生をひっくるめた黒人音楽とはなんなのか、というのをこの作品でPrinceから学ぶことができますし、それにはこのアルバムがベストのひとつなんじゃないかなと思います。

 

最初このアルバムは配信のみでリリースされていて、それをずっと聴いていたんですが、CDがリリースされて聴いてみると音の違いにびっくりしました。それほど大きくは変わらない印象の音楽もありますが、この作品は全然違います。

最近はApple Musicで音楽を聴くことも多くて、ここまで違うとあらためてちゃんとCD買おうと思わされました。

配信でもいいですが、ぜひCDで聴くことをおすすめします。

 

悲しみから喜びへ、生きている限り変えていかなきゃいけないんだな。

聴いているうちに顔が前へと向いている、音楽の喜びと共に。

そう思うアルバムです。

 

一夜明けて

Princeの死のショックをPrinceが変えてくれた。そんな夜です。

 

折しも、Piano&a Microphoneというピアノと歌のツアーの真っ最中でした。

Princeと言えばやはりギターのイメージが強くあるので、その形でいったいどんな音楽を見せてくれるのだろう、そしてそのあと生まれる作品はどんなものだろうと楽しみにしていました。果たしてphase threeがあったのか、とかそういうことも考えてしまいます。

 

PrinceのCDを全て集めるのは至難の技ですが(これだけのビッグ・アーティストでこれだけ手に入らないというのはすごい)、これからも聴いていない作品を聴いていこうと思います。

 

 

Hitnrun Phase Two

Hitnrun Phase Two

 
Hitnrun Phase One

Hitnrun Phase One

 
Art Official Age

Art Official Age

 
Prince [Analog]

Prince [Analog]

 
Prince

Prince

 
Purple Rain (1984 Film)

Purple Rain (1984 Film)

 
For You [12 inch Analog]

For You [12 inch Analog]

 
1999

1999

 
For You

For You

 
Lovesexy

Lovesexy

 

 

 

映画『Cu-Bop(キューバップ)』を観る

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大ヒットを記録した音楽ドキュメンタリー映画『Cu-Bop』のDVD発売を記念してアメリカ上映バージョンが公開ということで観てきました。
これはサックス奏者、音楽家菊地成孔のアドバイスにより再編集がされたものになります。
場所は渋谷アップリンク
 
2015年に同じアップリンクで上映されていて半年に渡るロングランだったものの観られずじまいで(半年もやってたのに…)、本日ようやくです。
公開後、音楽ファンの間ではムーブメントのようになっていたので、観た方もご存知の方も多いと思います。
 
キューバの音楽ドキュメンタリー映画というと2000年に公開されたヴィム・ヴェンダース監督の『ブエナビスタ・ソシアルクラブ』が金字塔ですよね。やっぱり。
今日のアフタートークでその話が出て、あらためて、「もう16年も前なのか…」とちょっと感慨深いものもありました。時の速さたるや。
 
この『Cu-Bop』がスポットを当てるのはキューバのジャズ。キューバのサックス奏者、音楽家のセサル・ロペスとニューヨーク在住のキューバ人ピアニスト、アクセル・トスカを中心に映画は構成されています。
と言っても、他のミュージシャンが脇役かというとそんなことはなく、インタビューも含めとても丁寧に、丹念にされていて、その生き方や姿を感じとることができます。
 
僕自身キューバ出身のジャズミュージシャンで言うとピアニストのゴンサロ・ルバルカバなど、よく目にするミュージシャンしか知らず、実際のところキューバでジャズがどのような環境で、どのように育まれているのかというのはなかなか知る機会がありませんでした。
情報量としてはやはりアメリカやヨーロッパ、そして日本が圧倒的です。
 
 
キューバでいったいどのようにキューバの音楽的土壌とジャズが混ざりあっているのか、今回記録されたのがたとえ一端であっても、全体を感じられるような、ありのままの景色を見ることができました。家のガレージで行われるセッション、洗濯をしながら腰を踊らす家族。
通りに音が溢れだす、日本ではそう見ることのない光景。
 
テクニック的に言えば、やはりリズムがものすごい。そしてタッチの強靭さ。ドラムやパーカッションはもちろん、ロランド・ルナのピアノソロはスウィングでありながらも独特の細かいビートを感じとれる、まさにキューバ人でしかなし得ないプレイの連続。
演奏が終わるたび思わず拍手をしてしまいそうになる、見事なライブ感が映画の中に詰まっています。
 
 
キューバ・ジャズと一口に言っても、アクセル・トマスのようにニューヨークで活動しているのとセサル・ロペスのようにキューバで活動しているのでは音楽的な比重が異なっていて、その対比も非常に興味深いものでした。
 
 
そしてこのドキュメンタリーでキューバ・ジャズの向こうに見るのは、というかむしろそれが本質なんですが、それはやはりアメリカとキューバの国交、政治的な壁です。
ニューヨークは音楽をやっている人間には憧れの地。でもそこへ行くには祖国を捨てなければならない。その選択がどれだけシビアで、困難なことか。
キューバの人が常に背負う重い、重い選択。
 
この1年でもめまぐるしく、急激に変化しているアメリカとキューバの関係。
その歴史的な転換期を切り取っているという意味でも、音楽ドキュメンタリーにとどまらない作品です。 
 
 
今日は上映後に監督の高橋慎一さんとディスクユニオン・ジャズプロデューサーの塙耕記さんによるアフタートークがありました。 
そちらで日本上映版とアメリカ上映版との違いについて聞くことができました。
 
変更点は
 
・ロランド・ルナのMoon Riverピアノソロがフルサイズになった
・セサル・ロペスバンドとアクセル・トマスのセッションシーンが追加された
・ルケス・カーティスのインタビューがカットされた
 
というところが時間尺として大きな部分ということでした。
他にも日本では気にならない部分(いわゆる国交、政治的にセンシティブな部分)や、日本人には必要だけれどもアメリカ人にとっては特に説明などが必要のない部分など細かいところで変更がされているそうです。
 
そしてDVD、CD、レコード全て異なったマスタリングがされているという話も出ました。このご時世、そこまでこだわるのは(なにより予算的に)本当に難しくて、発売元のディスクユニオンの姿勢に心打たれます。
 
アフタートークでは他にもジャケットの違いについてなど盛りだくさんの内容でした。
 
 
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今日は来場者全員にジャレ・オーガニックのザクロジュースがプレゼント。
なんだろう?と思ったらオルケスタ・デル・ソルのやまもときょうこさんから上映を記念して全員にプレゼントしたいとのことで、なんとも大盤振る舞い!
濃厚で自然の風味豊かなザクロジュース。おいしかったです。
 
それでは、この映画がますます広がることを願って。
 

kamitalabel.blog.fc2.com

 

キューバップ OST <CD>

キューバップ OST

 
キューバップ OST <LP> [Analog]

キューバップ OST [Analog]

 

 

ブエナ★ビスタ★ソシアル★クラブ  Film Telecine Version [DVD]
 
Buena Vista Social Club

Buena Vista Social Club

 

 


 

【意外と知らない】iTunesはハイレゾ対応している。

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最近ほんと「ハイレゾ」という言葉をよく聞くようになりました。

部分的にではありますが、iTunesハイレゾに対応していたのでそれについて書きます。

確認環境

MAC OS 10.11.4 El capitan

iTunes 12.3.3.17

 

昔は違った

以前Mr.Childrenの『REFLECTION』のことを書きました。

mureader.hateblo.jp

その時はiTunesで24bit/96kHzの再生できないからなーと特に考えもせず音楽制作用のDAW(波形編集ソフト)に読み込んで聴いていました。

以前のiTunesだとiTunesの環境設定やベースとなっているQuickTimeの設定を変えたりということが必要でした。いかんせん自分の環境がOS 10.8とかだったりでちょっと古かったんですよね。

最近OSをEl capitanにアップデートして、OSについてとかアプリまわりを検証していました。そんな時に気付いた。iTunesで24bit/96kHzが再生できるようになってる!しかもデフォルトで!

 

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iTunesでファイル情報を見てみると、確かに24bit/96kHzのまま。

特に内部でファイル変換なども行われていないようです。

 

最高ビットレート・サンプリングレートは?

じゃあどこまで再生できるんだろう?と思って少し検証しました。

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自分の環境で作れるオーディオ・ファイルが32bit/192kHzまでだったので、それでやってみたところ、無事再生可能でした。

 

注意点

FLACなど他の形式のハイレゾ音楽は聴けない

無理だろうな、と思いつつハイレゾの代表的なファイル形式のひとつであるFLAC形式のデータを読み込もうとしましたが、やっぱり無理でした。

右クリックメニューで「iTunesでは"〜〜.flac"を開けます」みたいに表示も出ますが、無理です。

FLACDSDで再生する場合はやはり他の対応アプリを選ぶ必要があります。

 

・Audio MIDI設定の変更と限界

ビットレートやサンプリングレートが高いファイルを再生する場合、Audio MIDI設定でビットレートとサンプリングレートの設定を変更する必要があります。変更しなくても再生自体はされますが、正しく再生されてはいません。出口のところで変わっちゃってるってことですね。

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例えば内蔵出力の場合(MACの内蔵スピーカーでハイレゾ聴く人がいるとは思えませんが...)、設定できる最高値は32bit/96kHzまでです。

 

 

iPhoneでは聴けない

iPhoneのミュージックアプリでApple Musicに加入している場合、iCloudミュージックライブラリというもので自動的にファイル変換がされるんですが、iCloudミュージックライブラリが対応していないので不適格となり、同期できません。まあそもそも変換される時点で音質落ちちゃうんですけど...。

iPhoneハイレゾはやはり他の方法を考える必要があります。

 

 

最後に

部分的なところではありますが、ハイレゾに対応してくれているというのはありがたいと感じました。知っている人は知っていることだったり常識なのかもしれませんが、検索してもこのことを書いている記事などは見つからず、昔のものや他の方法ばかりだったので。

実際、ハイレゾ環境を用意するのって現代の生活だとやっぱりお金がかかりすぎてなかなか大変です。

この記事がなにかお役にたてば幸いです。

 

他にもApple Musicでのトラブルなどをまとめた記事があるので、よかったらご覧ください。

 

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チック・コリア&小曽根真『CHICK&MAKOTO-DUETS-』を聴く。

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チック・コリア小曽根真のデュオ・ツアー開催を記念としてリリースされたコンピレーション・アルバム『CHICK&MAKOTO-DUETS-』。

発売は2016年4月20日

 

収録内容はコンピレーション・アルバムとあるように新録ではなく過去の録音で構成されたものとなっています。

小曽根真の2002年作『Treasure』のレコーディングの際に録音されていたものの未発表となっていた4つのインプロヴィゼーション曲を軸に、『Treasure』から再収録の「La Fiesta」、2011年にリリースされた東日本大震災のチャリティー作品『Live&Let Live -Love For Japan』の収録作がまとめられています。こちらの曲はヴィブラホン奏者、ゲイリー・バートンが参加した「Blue Bossa」、同じくゲイリー・バートンとチック夫人のゲイル・モラン・コリアがヴォーカルで参加した「Summertime」の2曲。

ボーナス・トラックには小曽根真がNO NAME HORSESで演奏したチック・コリアの「Crystal Silence」を収録。全8曲の構成。

小曽根真オフィシャルサイトのNEWSでは本編7曲目に「Pandora」との記載がありますが、こちらは収録されていないので注意。どういった経緯かは不明ですが、この曲は『Treasure』に入っているのでそちらで聴くことが可能です。ちなみに曲順も異なります。

 

インプロビゼーション曲は1、3曲目が小曽根真で始まり、2、4曲目がチック・コリアで始まっています。小曽根真自身が以前からチック・コリアの影響を大きく受けていたということもあり、音色やタッチなども近しい部分が感じられます。

正直、どちらから始まるかという情報を知らない段階ではパッと聴きどちらがどちらか判別するのが難しかったです。二人の音色に関する知識が自分に足りていないという、つまり聴いてる自分がダメなんじゃん、とも思い反省しましたが、音楽として深く溶け込んでいる二人の音色が素晴らしいと思いました。

 

小曽根真の音ははばたき飛び立つようで弱音はショパン的で美しく、チック・コリアのスパイシーさ保ちつつ造形のバランスがとれた音はやはりゆるがないものがあります。どちらかというと、小曽根真の音色は底から高い位置で鳴っていて、チック・コリアは低い位置から鳴っているように感じます。

 

こういったデュオ、しかもジャズ・ジャイアンツと言われるピアニストと日本人のピアニストが共演する場合、日本人的には先に序列をつけて聴いてしまう向きもあるかもしれませんが(チックと上原ひろみのデュオのようにそう感じてしまうケースもありますが...)、それはもったいないです。まさに二つのオーケストラが融合し、さらなる音楽の情景を見せてくれる、そんな作品です。実際には音がぶつかっている部分もあるそうですが、僕には全くわかりませんでした。よくもまあここまで混ざり合って音の流れが見事な織物、テクスチュアになっているなっているなと。

どんな音楽でもそうですが、両方のピアニストが高い次元でなおかつ対等な関係でないとこれは実現できません。

対照的なピアニストが共演するのもワクワクしますが、こういった共通する属性を持ったピアニストが一緒に奏でるというのは音楽にさらなる大きさや広さ、深さをもたらし、奇跡だなと。

 

できることなら新録も何か聴きたい!と思うところではありますが、それはデュオ・ツアーで今の二人を聴くというのがやはり一番なのかと思います。

4/19現在サントリーホールのチケットはまだあるようです。

 

熊本の地震の中リリースとなった本作。『Live&Let Live -Love For Japan』の曲が再収録されていることもあり、改めて考えさせられるというか、想うものがありますね。

 

小曽根真 Makoto Ozone Official Website

Chick & Makoto -Duets-

Chick & Makoto -Duets-

 
リブ・アンド・レット・リブ~ラヴ・フォー・ジャパン

リブ・アンド・レット・リブ~ラヴ・フォー・ジャパン

 

 

Two

Two

 

 

 

 

Margaret Chaloff(マーガレット・チャロフ)探訪その1

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Margaret Chaloff(マーガレット・チャロフ)が気になって、調べ始めている。

ピアノ教師としてとても優れた功績を残している。

アメリカのピアニストJulius Chaloff(ジュリアス・チャロフ)の奥さんで旧姓名はMargaret Stedman(マーガレット・ステッドマン)。ジャズ・サックス奏者Serge Chaloff(サージ・チャロフ)の母親。

 
その功績がどういったものか、というところなんだけど、教え子たちの名前を見るだけで唖然とする。
キース・ジャレットチック・コリアハービー・ハンコックジョージ・シアリング、ケニー・ワーナー、マルグリュー・ミラー、スティーブ・キューン、秋吉敏子などなど錚々たる、まさにジャスの巨人たち、そんな面々のピアニストにピアノを教えている。すごいよね、これ。
マーガレット・チャロフ自身はクラシック出身でロシア系のピアノテクニックを指導していたらしい。おそらくジャズの理論などそういったセオリー的なものではなく、ピアノの鳴らし方や体の使い方とかそういったピアノを弾くときの基になる部分や、クラシックなんじゃないだろうか。
 
指導としてはスピリチュアルな側面もあったらしいけど、どういったテクニック指導をしていたのかとか、スピリチュアルな部分をどうピアノの音色に反映していくのかとか詳しいところがわからない。
脱力、歌うように、禅的な、というあたりはピアノを弾く上で当然通る道なのだけど。
 
こちらのフォーラムにインタビューの転載が投稿されている。
ここではマーガレット・チャロフについてジャズピアニストのキット・ウォーカーが質問に答えている。キット・ウォーカーはマーガレット・チャロフが亡くなるまでの7-8ヶ月教わっていたという。これだけで、かなり精神的な部分や、アレクサンダー・テクニークとは異なるがそういった体の使い方といった根源的なものを重視した指導を行っていたということが伺える。
 
そして友人から教えてもらったバークリー音楽院が出版しているピアノテクニックの本があり、Stephany Tiernanというバークリーの教授がマーガレット・チャロフのアプローチを発展させているという。

www.berkleepress.com

 

ATNあたりで日本語訳されていないかなと思ったけれど、ざっと調べた感じされていないっぽい。なのでひとまず英語版を注文してみた。

 

Contemporary Piano Technique: Coordinating Breath, Movement, and Sound

Contemporary Piano Technique: Coordinating Breath, Movement, and Sound

 

届いたら、読みつつまた何か書ければいいなと思う。

マーガレット・チャロフはボストンで有名なピアノ教師だったということなので、バークリーともつながりが深いのだろうか。バークリーに行ってないのでその辺りもよくわからない。

どなたかバークリーに行った方でご存知の方、情報いただけると嬉しいです。

 

 
ハンコックが最初に参考、影響を受けたのがジョージ・シアリングというのを考えるとその師であったマーガレット・チャロフに師事するというのは自然なことだろうし、すごく重要な存在な気がする。
 
それぞれの自伝にも詳しい記載があったりするのだろうか。
 
 
引き続きしばらく気にかけつつ追ってみる。
その1と書きながらその2あたりで終わってしまうかもしれないけれど。

 

ハービー・ハンコック自伝 新しいジャズの可能性を追う旅

ハービー・ハンコック自伝 新しいジャズの可能性を追う旅

 

 

 

キース・ジャレット インナービューズ―その内なる音楽世界を語る

キース・ジャレット インナービューズ―その内なる音楽世界を語る

 

 

 

ジャズと生きる (岩波新書)

ジャズと生きる (岩波新書)

 

 

 

 ジャズを学べるサイトをまとめました。 

槇原敬之 SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT "cELEBRATION 2015" 〜Starry Nights〜 :Bru-ray&DVD発売。

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最近バタバタと忙しかったり体調を崩して寝込んでいたりで全然気づいていなかったリリース。

昨年行った槇原敬之『SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT "cELEBRATION 2015" 〜Starry Nights〜 』のBru-rayとDVDが発売されていました。

『不安の中に手を突っ込んで』のこと書いてて気づいた。

youtu.be

 

何度も載せちゃってるけどその時のライブの感動はこちら。

 

mureader.hateblo.jp

 

 

あの感動が甦っちゃうなーまいったなー。

嬉しす。

 

 

 

MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015

MAKIHARA NORIYUKI SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT “cELEBRATION 2015"~Starry Nights~ [DVD]

 

 

www.makiharanoriyuki.com

 

ラジオのBGM制作における音量レベル

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先日ラジオ番組のBGM制作を担当して、その際に音声レベル運用基準というものを知り、簡単にまとめました。

 

mureader.hateblo.jp

 

制作内容については特にふれていなかったので、そちらを簡単に。

 

制作物の内容としては、オープニング曲とエンディング曲、それとジングルなどつなぎの曲を数パターン作り納品という形でした。

曲の尺以外は特に指定もなかったので、通常通りミックス・マスタリングをして納品しました。いわゆる音源リリースなどと同じように。

形式だけは通常の音源と異なり16bit/48kHzでした。

これは放送独特の形式ですね。これも初めて知りました。

 

一度OKをもらい、無事完了と思っていたのですが、割と放送直前になって「音が大きすぎて割れてる...」と連絡が。

「え?!」と思い確認したものの、メーターやトゥルーピークなどでチェックしても、モニターやヘッドフォンでいくら確認しても音割れというのが発見できません。

 

制作担当の方によくよく聞いてみると、上記の記事にある「ラジオの規準は-20dBFS」というのがわかりました。番組制作のスタジオには結局行けずじまいだったので、どういった環境で再生されているのかはわかりませんでしたが、規準が-20dBFSの環境なら確かに割れてもおかしくないかな、と考えマスタリングのやり直し。

その際に「-13dBFS程度にしてもらえれば...」というお言葉をいただき、そこを規準に作業。

 

その7dBFSの差に疑問を抱きつつ、冒頭の記事のようなことを調べつつ作業。

無事納品完了となりました。

 

音声レベルについては番組制作の際に調整してくれるところもあるのかもしれませんが、今回についてはそれがほぼないと言ってよく、調べようにも資料や記事などもほとんどなかったため少し困ってしまいました。

唯一参考になったのはこちらの記事。かなり助かりました。

blogs.yahoo.co.jp

 

ラジオ局の方や例えば専門学校などでは常識的な知識として教わるのかもしれませんが、今回の制作担当の方が「みなさんレベル突っ込んでくるんですよねー。たいてい大きいんです。」と言っていたのもあって、音楽制作者にとって周知の知識ではないのではないかと思いました。というか「それみんな知らないってことなんじゃ...」と思ったり。

 

今回は上記の記事のようにVUメーター(今回はプラグインのものでしたが)や、冒頭の記事にも記載したStudio OneのK-Systemを用いて、作業しました。

K-Systemが実際どういう仕組みになっているのかは理解できていないのですが、K-20という規準でやると、K-20の「0」の値でラジオのテスト信号-20dBFSと制作した音源の-13dBFSがちょうど一致したので、作業上安心できる根拠になり得ました。

 

今後ラジオのBGM制作をすることがあれば、-13dBFSから最大-8.5dBFSを目安に取り組めば大丈夫だろうというラインが出来たので1度の制作で色々得ることができたなと感じています。と言っても幅広いですが...。上記記事のコメントを拝見する限りだとおよそ-10dBFSあたりがいい具合のラインなのかなと思っています。

ただ、例えば-10dBFSなら絶対大丈夫!というような規準があるわけでもないようなので、ある程度手探りになるのは仕方ないのかもしれません。

 

ラジオBGM制作で困った方の参考になれば幸いです。

 

 

テレビの音声規準についてはこちらがわかりやすいです。

テレビCM素材搬入基準「音声レベル運用規準」の適用について | JAAA 一般社団法人 日本広告業協会

 

オーディオテスト信号はこちら。

日本ポストプロダクション協会

http://www.jppanet.or.jp/documents/audio.html

 

K-Systemについて。

K-Systemとは:Studio Gyokimae

 

 

 

レコーディング/ミキシングの全知識 [改訂版] (「全知識」シリーズ)

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音を大きくする本 (Stylenote Nowbooks3)

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DAW自宅マスタリング 音圧&音質アップのための実践テクニック徹底解説 (DVD-ROM付き)

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