MUREADER’s blog

DAW、プラグイン、音楽機材などDTMの話が多めです。

ミックスをする時に考えること、大切なこと。

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さあ、ミックスをしよう!という時にまず考えること。

作詞・作曲、演奏、アレンジ、レコーディングからミックス・マスタリング。

仕事としても一通りのことはできて、それなりにいろんな現場に立ち会った経験があるからか、プロジェクトに関わっていない時でも相談を受けることがあります。

 

今回はアーティストからミックスについて相談を受けたので、自分ならどうしているか、というのを書ければと思います。

相談してきたのはアーティスト本人で、内容は「ミックス上がってきたんだけど、ラフミックスの方がいいんだよね。」というもの。

 

相談でなくとも、この種の話は意外とよく耳にします。少なくとも数ヶ月に一度くらいは。

 

なぜこういうことが起きるかというと、アーティストやミュージシャン、制作チーム側とエンジニアの意思の疎通がとれていない場合、そもそもアーティストがミックスのこと、レコーディングのことを何も知らない場合、です。

 

プロデューサーなり、ディレクターがちゃんといる一般的な現場であれば後日談的に「ラフの方がよかったんだけど、仕方ないよね」みたいな感じでうまく収まっているんですが(それはそれで切ない話だけど)、インディーズやインディペンデント(自主)の時はわかってる人もまとめる人もいない時がよくあるため、それで結構モメることがあります。

 

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エンジニアはミックスをする

当たり前のことですが、ミックスを担当するエンジニアはミックスをします。

レベル調整したり、パンニングしたり、コンプ・EQしたり、リバーブかけたり、エディットもしますしピッチ調整もします。アレンジの一員となってエキセントリックなことをすることもあります。

 

ただ、それって本当に必要でしょうか?

ちゃんとアーティスト、サウンド、そして大なり小なりのマーケットのことを考えられていますか?

 

エンジニアは基本的に外の人間であることが多く、その場限りでさようなら、だったりします。

アーティスト、ミュージシャン、バンドのサウンドも知らないし、今までの経験則で「これはこう」「あれはあれ」と、アーティストがミックスのことを知らなければなおさら、一人で進めて「はいこれです」とやってしまいがちです。

それでは、ダメです。ダメだと思います。

 

アーティストが不満を抱えたまま終わってしまって「なんか微妙だったし、次は他の人に頼もうか」と言われています、影で。

「やってもらったんだけど、全然よくないからあらためて代わりにミックスしてもらえない?」と依頼を受けたこともあります。

そうやって知らぬ間に次の仕事を失っていることがあります。

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じゃあ、どうすればええねん。

不満たらたらのミックス、それを実際に聴かせてもらうってどうなのかというと、良いんです。これが。

いい仕上がりなんです。いい仕事してるんです。

からしたらすごく良いし、やり直す必要なくない?といつも思います。必ずです。

っていうか不満を持つ理由がわからないです。いつも。

そして言います、「やり直さなくていいじゃん、ちょーいいし。」と。

 

では何が足りていないかというと、意思の疎通です。

相手がミックスのことをわかっていないなら、ちゃんとディスカッションしましょう。

まず録りが終わった段階(っていうか録る前から)、もしくは素材が届いた段階でどういう仕上がりにしたいか聞く。イメージする音源があるならそれを聴かせてもらう。基本ですけどね。

 

漠然としているなら、ラフミックスを聴いてもらって、「ここから自分はこういう風にするつもりだけど、どう?」と相談する。専門用語はなるべくやめて、イメージする音源などを逆に提供したり。とにかく聞けることは全部聞いて、伝えることを全部伝える。そして一緒に考える。

自分はメンバー、一員なんだという意識を持つこと。

そしてなんかよくわかってない彼らをサポートをしてあげること。

年が離れてても、経験に差があっても、関係ありません。対等です。

 

最初にそれがしっかりと出来ていれば、後で大きく認識がずれることは少ないし、建設的に意見交換、作業が進められます。無駄に感情的になることも避けられる。

多少めんどくさくても、後でもっとめんどくさくなるよりずっといいです。

どのみち仕上がりはいいんだし。

「絶対こうした方がいいのに、絶対。」と思うなら理解してもらえるまで話しましょう。

 

会社勤めなんかでもよく話題になりますが、コミュケーション力、大事です。

「いい仕事をしている」というその価値を知らないところで落としてしまっているというのは切ないし、ちゃんと評価につなげてほしいです。

 

売れているアーティストのお抱えエンジニアさんとかは、そういうところがホントにしっかり出来ているし、ディレクションまでやってしまう人もいます。

全幅の信頼を寄せられている、というわけです。

 

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商業音楽とオーガニック

それ以外に問題になってくるのが、商業音楽とオーガニックです。

基本的にエンジニアさんは商業ベースの仕事に慣れていて、オーガニック系の仕事をしたことがない人が多いです。ジャンルとしては、ブラジル、ジャズなどのアコースティックものや、ポップスではないアコースティックな歌モノなど。

イージーリスニングや、CM・劇伴インストとはまた違う立ち位置です。

 

その場合、音に対する考え方がそもそも違う。

オーガニック系のアーティストの場合、そもそもあまりコンプもかけたくないし、EQで整理されたくもないし、ボーカルをはじめリバーブをかけたくない、ということが多いです。

コンプもEQもリバーブも名前だけしか知らないくらいなんだけど、きっちりやったものを聴かせると「なんか違う」と。

つまりいわゆる商業音楽的な音が嫌い。

 

僕がミックス時の意思の疎通を強く意識するようになったのは、こういうオーガニック系のミュージシャンと接する機会がある時点を境にすごく増えたからです。

規模的にもすごく小さいし、予算もないし、PもDもいない。

でも音楽のクオリティはめちゃくちゃ高い。

このアーティストが求めているもの、音楽に必要なもの、そしてファンやまだ知らない人がそのアーティストの実像に違和感を持たないもの、そして音源ならではのもの。

 

そんなことを考えて日々接するうちに、必要なものは必要ない。何も足し引きしない。

極端に言えば、ミックスをしない。

それがいい結果を生むこともあるということに気づきました。

 

実際の作業自体は、レベル調整をして、パンニングをして(ベースをセンターにすると嫌がられることもあります)、本当に必要な部分だけコンプやEQをします。

マキシマイズもほとんどしない。

別の言い方をすれば、あえて聴きにくさを残します。

 

録り音命なところもあるし、素材がきて頭を抱えることもありますが、作品はずっと残っていく。

そう思えば、自ずとそこにある音楽が主体となっていくでしょう。

 

 

 


 


 


 

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