『BLUE GIANT』を読む
石塚真一の『BLUE GIANT』、ジャズをやっている身としては避けて通れませんね。
いきなり言っちゃいますが、すごく面白い漫画です。
過去にも『坂道のアポロン』というノイタミナでアニメ化もされたジャズ漫画がありましたが、それよりもジャズに対してストイックに描かれている漫画です。
感情が音を生み、音が感情を生むというのはまさにその通りで、ジャズにおいて音を出すその刹那、その情景が本当によく描かれている。まあピアノの沢辺くんみたいにセッションでひたすら左手しか弾かないなんてことはまずないですが...。それも彼の卓越した技術やセンスを表現するのに一役買っているという印象です。
日本におけるジャズシーンというのはどこか閉鎖的で、「一緒に楽しもうよ」の逆というか、戦いの世界なんですね。僕はそういう印象を持っています。
世界へ目を向けると、例えばアメリカの黒人コミュニティなんかは互いに育て合う環境が自然と整っていて、日本におけるそれとは全く異なります。
そういう意味でもこの『BLUE GIANT』は日本のジャズの「今まさに」というところをしっかりと描くことができています。ジャズミュージシャンは圧倒的に金がない、というところも含めて。笑
世界に出て行くなら別ですが(おそらく主人公の宮本大は海外に出るのでしょう)、日本の中でジャズだけで食べていくというのはとても大変です。
1回ライブをしてギャラが千円二千円というのはザラです。まあバンドマンみたいにマイナスになるよりはマシなのかもしれませんが。笑
先生をしながら、夜はライブをするというのがジャズのみならず一般的なプロミュージシャンの生活ではないでしょうか。
それでもやりたい、それで生きてく。そんな凄みが嘘偽りなく『BLUE GIANT』からは伝わってきます。
漫画として単純に面白く、しかもそれが本質的である、というのはすごいなと読んでいて思います。そしてジャズがやりたくなる。そんな力を持っている作品。
これからの展開が楽しみ。
こちらにも読んで考えてみたことを書きました。