アボイド・ノートについて考える
ジャズ理論を勉強する時に必ず最初の方に現れる、アボイド・ノート。 改めて考えてみたいと思います。
アボイド・ノートって何?
アボイド・ノート(avoid note)というのは直訳すると「回避音」ということです。弾かずに避けた方がいいよっていう音のことですね。
ジャズの教本には大抵出てきますが、「なんで弾いちゃいけないの?」っていうのを納得いく形で説明してくれているものは意外と少ないように思います。「アボイドなんだから弾いちゃダメ!」みたいな。
自身も、腑に落ちなかったり、「アボイドはまあ、そんな気にしなくていいよ」って言われたり、「じゃあなんであるのさ!」と思うことが多かったので、まとめてみたいと思います。
アボイド・ノートの例
Cメジャーのダイアトニックを例にして考えたいと思います。
C△7→F
Dm7→B
Em7→FとC
F△7→なし
G7→C
Am7→F
Bm7♭5→C
11thとか13thとかって書いてもいいんですが、こうやって音名にした方がわかりやすいと思います。 なんてったって出てくる音は3つだけ。グッとハードル下がった気がしませんか?
なぜアボイド(回避)しなければいけないの?特徴と理由
まず、上記のCメジャーダイアトニックにおけるアボイド・ノートの特徴を見ていきます。
1.コード・トーンの半音上にある(Dm7を除くすべて)
2.ドミナント7thのトライ・トーンになる(Dm7)
こんな風に2パターンの特徴が読み取れます。
1について、半音上となっていますが、ピアノの場合に左手でコード、右手でオクターブ上のアボイドを弾いた際、短9度が現れます。これはクラシックの和声において短9度というのは響きが不快で不協和なため、避けなければならないというのがあります。
実際弾いて見るとわかるかと思うのですが、確かに結構不協和な感じです。左手でE、右手でオクターブ上のFの音を弾いてみてください(手が大きい人は片手でもいいです、笑)。
ちょっとギャーって感じしますよね。他にも不協和な音、というのはありますが、この短9度という関係性はどれよりも不協和の度合いが強く感じます。
つまりアボイドする理由の1つめは、「コード・トーンに対して短9度の響きを持ち、不協和な音になるため」ということになります。
2については文字通り、Dm7のFとアボイド・ノートのBが、G7の7th(F)と3rd(B)になり、Dm7というよりG7(Bm7♭5でもいいですが)の性格が強くなってきます。
なのでアボイドする理由2つめは、「他のコードの性格が強くなってしまうため」と言えます。
アボイド・ノートの抱える曖昧さ
ここまできて、見えてくるものがあります。
個人的な見解ですが、アボイド・ノートに曖昧さを感じ、はっきりしない理由には上記のようにアボイド・ノート自体に異なる性質があるからだと考えることができます。
特に、2についてはかなりニュアンスの占める割合が大きくなるため(他のコードって言っても...言うても転回形やん、みたいな)、曖昧さが増してきます。実際のところ1と2どちらについても2オクターブ、3オクターブ離れると気にならなくなってきたりします。
重要なのはトニック、サブドミナント、ドミナントなどコードにそれぞれ性格があるように、アボイド・ノートにも性格があるということ。そう考えると「アボイドはまあ、そんな気にしなくていいよ」と言うのが理解できるかな、と思います。
逆に、短9度だから、他のコードのようになるから、「あえて使う」といったことも考えやすくなるのではないでしょうか。
実際に短9度だからダメと言っても、C7でAlterdと考えた時に♭9thがアボイドになるなんてことが書いてある理論書には出会ったことがありません(っていうか、そういうのあったら勉強のために見たいので教えてください)。でもCとD♭だけで鳴らすと気持ち悪いよね、だから使い分けよう、そんな風に柔軟に考えることができるようになります。
結論だけで言えば世の中のセオリーや感覚と変わりませんが、プロセスを深く考えることで腑に落ちて、身になると思います。
アボイド・ノートは「回避するべき音」と言うよりは「取扱いに注意する音」というMark Levineの言葉を借りて終わりにしたいと思います。
お役に立てば幸いです。