Franck Avitabile『Just Play』を聴く
Franck Avitabile(フランク・アビタビレ)の作品について、今回はピアノソロの作品『Just play』を取り上げます。録音は2004年、33歳の時の作品です。発売は2005年。
いまこれを書いている私自身が33歳なので、33歳でこれを録音したのか、と複雑な感慨があります。笑
『In Tradition』でのMichel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ)プロデュースによるデビュー(1998年)から、ペトルチアーニ死後に制作された『Right Time』、同じ世代のミュージシャンと作り上げた『Bemsha Swing』、今まで培ったもの、彼の持つ伝統がすべてピアノソロという形で凝縮された作品。
とにかく、ただただ、美しい。
アビタビレのピアニズムを考える時にまず思い浮かぶのはこれ以上ない美的感覚だと思います。それはジャズという枠組みを超えて、ひとつの音楽、芸術としての「美」。
良いか悪いか、というジャンルの話ではなくて、この音楽をジャズとして聴いた時には違和感すら覚えますし、クラシックのピアノ作品集を聴くような心構えにもなります。
そういった概念を超えて存在する、ただ音楽としての「美」。
そこに到達したんだな、というピアノが奏でる結晶。
ここにきて、ペトルチアーニの跡を継いだような立ち位置だったアヴィタビレが、ひとりの芸術家、ピアニストとして唯一無二の存在になります。ジャズという地平を美に昇華していく。
たぶんこれを初めて聴けば「ペトルチアーニに似てる」と思う人はいないんじゃないでしょうか。
美しい変則的なアルペジオから始まる「Resonace」、ルイーズへの手紙というタイトルの「Lettre à Loïse」、普通と違うキーで始め、途中で美しく転調しピアノが躍動する「My Romance」。
そして『In Tradition』でも演奏されている「August In Paris」はこの結晶のような作品の中の究極と言っていいでしょう。11分を超えるこの作品における大作であり、圧巻の演奏です。「美」の持つカタルシスというのを感じてなりません。
その後も「Memories」といった叙情感溢れる曲。軽快に演奏されるスタンダード「Smile」、凄まじい左手の指さばきで展開される「Moody Piano」では思わず唸り声が聴こえます。「Real Addict」ではアヴィタビレ独特の調性感、などなど、「美」という空間を自由に泳ぎ回るアヴィタビレのピアニズムを凝縮した1枚となっています。
まぎれもない「名盤」だと、私はそう思います。
ちなみに、この「Just Play」の話には続きがあって
1. Resonace
2. Lettre à Loïse
3. My Romance
4. August in Paris
5. Memories
6. Magic Mirror
7. Smile
8. Moody Piano
9. Morning Star
10. Dreamland
11. Isopod
12. Real Addict
13. Corps et Âmes
14. Nature Boy
Franck Avitabileのサイトはこちら。
他にもFranck Avitabileのディスクレビューを書いています。
どの作品も素晴らしいので、ぜひ読んでみてください。